早期の事業承継準備が重要な理由と始め方
更新日:10月14日
今回は、事業承継の準備を早期に始めることの重要性と、その具体的な始め方について、詳しくお話しします。
〈目次〉
1. 早期の事業承継準備が重要な理由
多くの経営者が「まだ先のこと」と考えがちな事業承継ですが、実際には10年以上の準備期間が必要だと言われています。
早期に準備を始めることには、以下のような重要な理由があります。
1.1 後継者の育成に十分な時間をかけられる
経営者としての資質を育むには、長期的な視点での育成が不可欠です。
具体的には以下のような能力開発が必要です:
- 経営戦略の立案と実行能力
- 財務管理能力
- リーダーシップとコミュニケーション能力
- 業界動向の把握と分析力
- リスク管理能力
これらの能力は、座学だけでなく、実際の経営現場での経験を通じて培われていきます。
早期に準備を始めることで、後継者に様々な経験を積ませる機会を提供できます。
1.2 計画的な資産・株式の移転が可能になる
事業承継には、自社株式や事業用資産の移転が伴います。
これらを税制面で有利に進めるには、長期的な計画が必要です。例えば:
- 暦年贈与を活用した段階的な株式移転
- 事業承継税制の活用
- 種類株式の発行による議決権と配当の調整
これらの対策は、準備に時間がかかるため、早期に開始することが重要です。
1.3 企業価値の向上に取り組める
事業承継を見据えて早期に準備を始めることで、企業価値の向上にも取り組めます。
例えば、
- 財務体質の改善(借入金の返済、内部留保の蓄積など)
- 業務プロセスの効率化・標準化
- 新規事業の立ち上げや既存事業の拡大
- 知的財産権の取得・整備
これらの取り組みは、承継後の事業の持続可能性を高めることにもつながります。
1.4 不測の事態に備えられる
経営者の突然の病気や事故に備えて、以下のような対策を講じることができます。
- 事業継続計画(BCP)の策定
- 生命保険や傷害保険の活用
- 委任状や遺言書の作成
これらの準備があれば、不測の事態が発生しても事業の継続が可能になります。
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2. 事業承継準備の具体的な始め方
では、具体的にどのように準備を始めればよいのでしょうか。
以下に、詳細なステップをご紹介します。
2.1 現状分析
まずは自社の現状を客観的に分析することから始めます。
- 財務分析
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を基に、収益性、安全性、成長性を分析
- SWOT分析
自社の強み、弱み、機会、脅威を洗い出す
- 事業性評価
主力事業の将来性、競争力を評価
- 人材分析
後継者候補の有無、幹部社員の能力評価
- 株主構成の確認
現在の株主構成と、理想的な承継後の株主構成を比較
2.2 承継の方向性の検討
現状分析の結果を踏まえ、最適な承継方法を検討します。
- 親族内承継
- 従業員承継(MBO/EBO)
- 社外への引継ぎ(M&A)
それぞれのメリット・デメリットを考慮し、自社に最適な方法を選択します。
承継方法については、こちらの記事も参考にしてください。
2.3 後継者の選定と育成計画の策定
後継者候補を決定したら、具体的な育成計画を立てます。
- 必要なスキルや経験の洗い出し
- 社内での計画的なローテーション(営業、財務、人事など各部門の経験)
- 外部研修やセミナーへの参加計画
- メンター制度の導入
- 経営会議への参加
2.4 経営の見える化
円滑な承継のために、経営の透明性を高めます。
- 経営理念、ビジョン、中長期経営計画の明文化
- 業務プロセスのマニュアル化
- 社内規程の整備
- 取引先との関係性の文書化
- 知的財産の棚卸しと権利化
2.5 財務・税務対策
計画的な資産移転と税負担の軽減のため、以下のような対策を講じます。
- 自社株式の評価方法の検討と株価対策
- 事業承継税制の活用検討
- 種類株式の発行検討
- 資産管理会社の設立検討
- 生命保険の活用
2.6 法務面の整備
スムーズな承継のために、以下のような法務面の整備を行います。
- 株主間契約の締結
- 定款の見直し(譲渡制限条項の追加など)
- 役員報酬規程の整備
- 就業規則の見直し
2.7 承継計画の策定
これまでの検討を踏まえ、具体的な承継計画を策定します。
- 承継の時期と方法の決定
- 段階的な権限移譲のスケジュール
- 株式・財産の移転計画
- 後継者の育成スケジュール
- 現経営者の退任後の処遇
2.8 関係者との対話
承継計画について、以下の関係者と早めに対話を始めます。
- 家族(特に他の相続人となる可能性のある方々)
- 従業員(特に幹部社員)
- 取引先(主要取引先、金融機関)
- 顧問税理士、弁護士
3. まとめ
事業承継の準備は、「早すぎる」ということはありません。
むしろ、早めに始めることで選択肢が広がり、スムーズな承継が可能になります。
ただし、ここで紹介した内容はあくまで一般的なものです。
実際の準備を進める際は、自社の状況に応じて適切にカスタマイズする必要があります。
また、事業承継は経営戦略そのものです。
承継を機に、事業モデルの再構築や新規事業の立ち上げなど、企業の持続的成長につながる取り組みを検討することも重要です。
一人で抱え込まず、従業員や専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
事業承継でお悩みの際は、ぜひご相談ください。
皆様のお力になれるよう全力でサポートさせていただきます。
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