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中小PMIガイドライン⑦:発展編(詳細編―経営統合)


M&A後の経営統合(PMI)は、M&Aの成功を左右する重要なプロセスです。


特に中大規模案件においては、その重要性はさらに高まります。


本ブログでは、動画の内容をもとに、PMIにおける「経営統合」の具体的な取り組みについて解説し、M&Aを成功に導くためのポイントを詳しく説明します。


中小PMIガイドライン⑦:発展編(詳細編―経営統合)

※画像はイメージです。


 

〈目次〉

 

※実際の動画の内容

[出典]動画⑦:中小PMIガイドライン講座 発展編(詳細編―経営統合)(metichannel/経済産業省)


※以下、『中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~』も参考にしながら、動画を解説していきます。





1. 経営の方向性の確立:共通のビジョンで統合を推進

 
1. 経営の方向性の確立:共通のビジョンで統合を推進

M&Aによって企業は大きな変化を迎えます。従業員は、将来への不安や組織文化の違いに戸惑いを感じ、モチベーションの低下に繋がる可能性があります。

このような状況を避けるため、M&A後の「目指す姿」を明確にすることが重要となります。


1.1 経営理念と経営ビジョンの策定

まず、統合後の企業の根本的な価値観を示す「経営理念」と、将来像を示す「経営ビジョン」を策定します。

これは、従業員が目指す方向を理解し、共感を得るための基礎となります。



1.2 具体的な道筋を明確化

策定したビジョンを実現するため、具体的な道筋を「経営戦略」「経営目標」「事業計画」に落とし込みます。

これにより、M&Aの目的やシナジー効果の実現可能性を高め、従業員のモチベーション維持・向上に繋がります。



1.3 関係者とのコミュニケーションとブラッシュアップ

これらの策定は、M&Aプロセスの初期段階から開始し、譲り渡し側の従業員も巻き込みながら、仮説検証を繰り返し、ブラッシュアップしていくことが重要です。

関係者間の相互理解を深め、統合後のスムーズなスタートを切るために、積極的なコミュニケーションを心がけましょう。





2. 経営体制の確立:新体制構築でスムーズな事業運営を

 
2. 経営体制の確立:新体制構築でスムーズな事業運営を

M&A後の事業を円滑に進めるためには、新たな経営体制の早期確立が不可欠です。

特に、譲り渡し側の経営体制は、統合後の企業文化や事業運営に大きな影響を与えるため、慎重に進める必要があります。



2.1 新経営者の選定

中小企業のM&Aでは、譲渡後、当面は譲り受け側の経営者が兼務するケースが多いですが、譲り受け側経営者の負担軽減中長期的な視点から、譲り渡し側の経営を担う人材を確保する必要があります。



2.2 選定のポイント

新経営者の選定にあたっては、以下の3つの観点から慎重に検討する必要があります。


●リーダーシップや判断力などの経営者としての資質

●譲り渡し側の事業に対する理解度

●譲り渡し側の従業員・取引先など関係者との良好な関係性の構築



2.3 経営チームの組成

2.3 経営チームの組成

新経営者を支える経営チームの再構築(組成)新たな人材の配置も検討する必要があります。

経営チームの変更は、影響を十分に検討し、慎重に対応することが求められます。





3. グループ経営の仕組みの整備:一体運営でシナジー効果を最大化

 
3. グループ経営の仕組みの整備:一体運営でシナジー効果を最大化

M&A後のシナジー効果を最大限に発揮するためには、譲り受け側と譲り渡し側が一体となって経営を行う体制を構築することが重要となります。


3.1 一体経営体制の構築

譲り受け側から譲り渡し側の取締役会や経営会議に人員を送り込むことで、グループ全体の方向性を共有し、意思決定をスムーズに行う体制を構築します。



3.2 積極的なコミュニケーション

取締役会や経営会議以外にも、両社の経営陣が膝詰め でコミュニケーションを取る場を積極的に設けることが重要です。


※譲り渡し側の従業員との相互理解を促進するために行う具体的な取り組み

1. 経営理念・ビジョン策定への参加
●譲り渡し側の従業員も巻き込み、統合後の企業の「経営理念」と「経営ビジョン」を共に策定するプロセスを設けることが重要です。
●従業員が「目指す姿」や「価値観」を共有することで、一体感を醸成し、新しい企業への帰属意識を高めることができます。

2. 経営戦略・目標・事業計画策定への参加
●「経営ビジョン」の実現に向けた具体的な道筋となる「経営戦略」「経営目標」「事業計画」の策定プロセスにも、譲り渡し側の従業員を参加させることが有効です。
●自らの意見やアイデアが反映されることで、従業員の当事者意識が高まり、統合後の事業への積極的な参画を促進することができます。

3. 積極的なコミュニケーション
●M&Aプロセス初期段階から、譲り受け側経営陣は譲り渡し側の従業員と積極的にコミュニケーションを取り、相互理解を深める努力を継続することが重要です。
●従業員の不安や疑問に寄り添い、丁寧に説明することで、信頼関係を構築し、円滑な統合を実現することができます。

4. 統合後のキャリアパスに関する情報提供
●譲り渡し側の従業員にとって、統合後の自身のキャリアパスは大きな不安要素となります。
●譲り受け側は、統合後の組織体制や人事制度、研修制度などを具体的に説明し、従業員のキャリアプランに対する明確なビジョンを示すことが重要です。

5. 交流機会の創出
●部署や立場を超えた交流機会を設けることで、譲り受け側と譲り渡し側の従業員が相互理解を深め、親睦を深めることができます。
●合同研修や懇親会、社内イベントなどを開催することで、自然な形でのコミュニケーションを促進することができます。

6. 研修制度の導入
●譲り受け側の企業文化や事業内容、業務プロセスなどを理解するための研修制度を導入することで、譲り渡し側の従業員のスムーズな適応を支援することができます。
●異文化理解研修なども実施することで、多様性を受け入れる土壌を育むことができます。

これらの取り組みを通じて、譲り受け側と譲り渡し側の従業員が一体感を持ち、新しい企業文化を共創していくことが、M&A後の成功に不可欠です。

3.3 派遣人材の当事者意識

譲り渡し側に派遣される人材は、M&A後の成長や目的実現に当事者意識を持って取り組む必要があります。



3.4 意思決定プロセスの確立

3.4 意思決定プロセスの確立

中小企業では、職務権限や役割分担が不明確な場合が多く、M&Aを契機に、権限を適切に分散し、取締役会を定期的に開催することで、透明性の高い意思決定プロセスを確立します。



3.5 会議体の見直し

3.5 会議体の見直し

譲り渡し側の経営状況把握とコミュニケーション促進のため、譲り受け側経営陣が譲り渡し側の取締役会や経営会議へ参加します。

また、各部門の会議にも参加し、事業状況を把握することで、会議体の必要性を見直し、新たな会議体を設置したり、不要な会議体を廃止するなど、効率的な運営体制を構築します。





まとめ(中小PMIガイドライン⑦)

 

M&A後の経営統合は、「経営の方向性の確立」「経営体制の確立」「グループ経営の仕組みの整備」という3つの取り組みが重要となります。


これらの取り組みを適切に行うことで、M&Aの目的を達成し、シナジー効果を最大化することができます。



M&Aは、企業にとって大きな成長のチャンスです。 統合プロセスを丁寧に進め、新しい企業文化を創造することで、M&Aを成功に導きましょう。




次回

 




※関連書籍

 
『日本型PMIの方法論――中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス』(竹林 信幸/プレジデント社)


本書は、中堅・中小企業向けのPMIに焦点を当てた実践的な指南書。


著者の豊富な経験に基づき、日本の企業文化に適したPMIの方法論を展開している。


特筆すべきは、PMIを単なる統合作業ではなく、買収後の成長プロセスとして捉える視点。


人的要素の重要性を強調し、企業文化の違いを問題視せず、むしろ活かす方法を提案している。


M&Aを検討する中堅・中小企業の経営者や実務担当者にとって、貴重な指針となる一冊といえるだろう。



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