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執筆者の写真ふかや経営サポート

中小PMIガイドライン⑨:発展編(詳細編―管理機能)



M&Aによって企業規模を拡大し、新たな事業領域へ進出したいと考えている方も多いでしょう。

しかし、M&A後の統合は、思っていた以上に複雑で困難なプロセスです。


この動画では、中小企業が直面するPMI特有の課題や、大企業との違いなどを詳しく解説しています。中小企業ならではの視点で、成功するためのヒントやノウハウを満載です。


この動画を理解することで、

・限られたリソースの中で、効率的にPMIを進める方法がわかる。

・従業員規模が小さい企業ならではの課題を解決するためのヒントが得られる。

・大企業とのPMIで成功するための戦略を立てることができる。

といった効果があります。


中小企業のM&A成功の鍵を握るPMI。ぜひ、この動画を参考に、自社の成長戦略を立ててください。

中小PMIガイドライン⑨:発展編(詳細編―管理機能)

※画像はイメージです。


 

〈目次〉

 

※実際の動画の内容


[出典]動画⑨:中小PMIガイドライン講座 発展編(詳細編―管理機能)(metichannel/経済産業省)


※以下、『中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~』も参考にしながら、動画を解説していきます。



今回のテーマ

 
今回のテーマ

今回は、本講座における最後の分野である「業務統合における管理機能」について、解説していきます。




業務統合における管理機能の重要性

 
業務統合における管理機能の重要性

M&Aは企業成長の大きなチャンスですが、成功させるためには、統合後の業務を円滑に進めるための管理機能が不可欠です。管理機能が適切に機能しなければ、期待したシナジー効果が発揮できず、M&Aが失敗に終わる可能性も高まります。


そのためには、管理機能における4つの重点分野(人事労務、会計財務、法務、ITシステム)それぞれで、譲り受け側と譲り渡し側の現状と課題を把握し、具体的なゴールを設定しておきましょう。


各分野のゴールを設定することで、PMI全体の方向性を明確化し、具体的な取り組みを計画・実行しやすくなります。


また、各分野の専門家(弁護士、税理士、社会保険労務士、ITベンダーなど)の支援を得ることで、より効果的かつ効率的なPMIを推進できます。




管理機能における4つの分野の「ゴール」

 
管理機能における4つの分野の「ゴール」

I. 人事労務分野のゴール:

  • 法令遵守を徹底し、人事労務関係の課題を是正する。

  • 従業員が納得できる人事労務関係の内部規定を整備・徹底する。

  • 労働契約関係の不備を是正し、改善を行う。

  • 組織・人事配置の見直しと人材配置の最適化を行う。


II. 会計財務分野のゴール:

  • 会計財務処理の不適切な状況を是正し、適正な処理を徹底する。

  • 会計財務に関する規定や決算手続きを早期化する仕組みを整備・徹底する。

  • 会計財務を管理するための仕組みを整備・徹底する。

  • グループファイナンス導入により、資金効率を改善する。


III. 法務分野のゴール:

  • 法令遵守を前提に、法的課題やリスクに適切に対応する。

  • 会社組織の整備等により、譲渡側の内部状況を改善する。

  • 契約関係の見直し等により、譲渡側の外部関係者との関係を改善する。


IV. ITシステム分野のゴール:

  • ITシステム環境におけるリスク・課題を把握し、必要に応じて是正する。

  • コストと効果のバランスを考慮し、業務効率の維持・向上に寄与するITシステムを整備する。



人事労務分野における取り組み詳細

 
人事労務分野における取り組み詳細

①法令遵守の徹底

M&Aのデューデリジェンスの結果、労働条件通知書や労使協定に関する文書など、法令遵守に関わる不備が明らかになった場合は、速やかに是正する必要があります。


従業員の権利保護と企業の評判を守るためには、法令遵守を徹底することが不可欠です。


人事労務関係の法令違反を放置すると、問題が深刻化し、社外に知れ渡ることで、買収側と被買収側の両社の評判が著しく低下する可能性があります

弁護⼠や社会保険労務⼠などの専門家と協議し、早期に改善策を講じましょう。


また、従業員に対しては、人事労務関係の法令を遵守することの重要性を理解させ、遵守を促す必要があります。



②内部規定の整備

人事労務に関する内部規定を見直し、実態に即した内容に改定する必要があります。

買収後の統合においては、最新の法改正に対応した見直しも必要となります。


特に、労働条件の変更を伴う場合は、従業員にとって重大な影響があるため、十分な説明を行い、慎重に進める必要があります


一定期間は変更を控えるか、変更せざるを得ない場合は、慎重な対応が求められます。



③労働契約の適正化

未払い賃金、長時間労働、有給休暇に関する不備など、従業員との個別労働契約に関する問題点があれば、速やかに改善に取り組む必要があります。


PMIの成功には、被買収側従業員の協力が不可欠です。

長時間労働や未払い残業代の問題は、従業員のモチベーション低下や離職につながる可能性があるため、早期に解決することが重要です


経営上の重要事項として認識し、必要に応じて人員増、待遇改善、労働環境改善などの対策を講じましょう。



④人材配置の最適化

買収側と被買収側の組織および人事配置を見直し、グループ全体で最適な人員配置を実現します。


人材の有効活用、技術・ノウハウの共有を促進することで、グループとしての統合を強化します。

その際、労働条件の相違点に留意しながら、グループ全体にとって最適な人員配置を行うことが重要です




会計財務分野における取り組み詳細

 
会計財務分野における取り組み詳細

会計処理の適正化

M&A成立前に会計処理の誤りや横領などの会計不正リスクが存在する場合、PMIにおいて速やかに是正する必要があります。


過去の会計処理の誤りを修正し、適切な会計処理を徹底することで、財務諸表の信頼性を確保し、投資家や債権者からの信頼を得ることが重要です


会計不正リスクへの対応には、内部統制の強化、不正行為の早期発見のための体制構築などが含まれます。



②会計手続きの連携

買収側と被買収側で会計処理方針や会計システムを統一することで、業績の尺度が統一され、迅速な業績把握が可能になります。


被買収側の決算早期化を支援することも、グループ全体の業績管理を効率化するために重要です

例えば、買収側が使用している会計システムに被買収側を統合することで、データ収集や分析をスムーズに行うことができます。



③業績管理の強化

予算制度、管理会計制度、原価計算制度などを導入し、適切な業績管理体制を構築します。

特に原材料価格の高騰など、外部環境が変化する状況下では、タイムリーな原価把握が重要となります


原価計算制度の導入により、製品やサービスごとの収益性を把握し、適切な価格設定やコスト削減策を講じることができます。



④資金効率の改善

グループファイナンスの導入により、有利子負債の削減や資金調達コストの低減を図ります。

買収側の信用力を活用した資金調達や、グループ内での資金の効率的な運用などが考えられます。


ただし、中小企業の場合、地域金融機関との関係性が重要な場合もあるため、既存の金融機関との関係性も考慮しながら、慎重に進める必要があります




法務分野における取り組み詳細

 
法務分野における取り組み詳細

①法令遵守とリスク対応

企業の規模に関わらず、法令違反は事業継続を危うくする可能性があります。

M&Aのデューデリジェンスの結果、許認可手続きに関する不備など、法令遵守に関わる問題点が明らかになった場合は、速やかに是正する必要があります。


弁護⼠などの専門家と連携し、早期に改善策を講じることで、法的リスクを最小限に抑えることができます。


また、会社に関連する法令等については、研修などを通して社内に周知徹底することも重要です

法令遵守を徹底することで、企業の社会的責任を果たし、信頼を維持することができます。



②内部規定の整備

会社法上の必要事項を満たした内部規定を整備し、実態との乖離をなくすことは、企業の健全な運営のために不可欠です。

譲渡側企業において、内部規定が存在しない、または存在していても実態と乖離しているケースが見受けられます。


PMIにおいては、会社の職務分掌や決裁ルートの見直しも検討した上で、内部規定を見直す必要があります


会社法に基づく決議や議事録作成が適切に行われていない場合もあるため、これらも見直す必要があります。


内部規定を整備することで、業務の透明性を高め、コンプライアンス違反のリスクを低減することができます。



③外部関係者との関係の適正化

M&A成立以前において、外部関係者との契約関係が不明確であったり、譲渡側企業にとって不利な条項が定められている場合があります。


また、各種法令の改正に十分対応できていない場合もあるため、弁護⼠などの専門家と協力し、緊急性や重要性の高いものから改善対応していく必要があります。


契約関係を見直し、必要があれば再交渉することで、譲渡側企業の権利を守り、不利益を回避することができます


特に、M&A成立前に外部関係者との契約関係が不明確な場合や、譲渡側企業にとって不利な取り決めが定められている場合は、PMIにおいて見直しを行う必要があります。


各種法令の改正にも対応していく必要があり、専門家の協力を得ながら、緊急性や重要性が高いものから改善を進めることが重要です。




ITシステム分野における取り組み詳細

 
ITシステム分野における取り組み詳細

①ITシステム環境の是正

中小企業の場合、ITシステムに関する管理責任者が不在であることがあります。


適切かつ安全なITシステムの導入のため、ITシステムにおけるリスクや課題を把握し、必要に応じて是正します。


具体的には、以下の取り組みが挙げられます。


・ITシステム管理責任者の明確化:

ITシステムの責任者を明確化することで、責任体制を構築し、問題発生時の迅速な対応を可能にします。


・ITシステムの棚卸:

既存のITシステムの現状を把握し、潜在的なリスクや課題を洗い出します。


・リスク評価:

特定されたリスクや課題に対して、影響度や発生確率を評価し、優先順位付けを行います。


・改善計画の策定:

優先順位の高いリスクや課題に対して、具体的な改善策を検討し、計画を策定します。



②ITシステムの整備

ITの進化は著しく、会計システムや生産管理システムなども、以前と比べて格段に使いやすく、また安価になっています。


業務効率の向上に資するITシステムを整備します。

費用対効果やリスク管理を考慮し、適切なシステムを導入することが重要です。


具体的には、以下の取り組みが挙げられます。


・IT利用に関する基準やルールの策定・周知徹底:

ITシステムの利用に関する明確な基準やルールを策定し、従業員に周知徹底することで、セキュリティリスクやコンプライアンス違反を防止します。


・情報セキュリティ対策:

外部からの攻撃など、ITを利用することのリスクも存在するため、適切な情報セキュリティ対策を講じることが重要です。

ファイアウォールやウィルス対策ソフトの導入、アクセス権限の設定など、具体的な対策を検討します。


中小企業の情報セキュリティ対策に関する具体的な対策としては、独立行政法人 情報処理推進機構が2021年に公表した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を参考にすると良いでしょう



・ソフトウェアライセンス違反の抑止:

有料ソフトウェアの違法複製や不正利用など、ソフトウェアのライセンス違反を防止するための対策を講じます。

従業員に対してライセンスに関する教育を行い、ソフトウェアの利用状況を定期的に確認するなどの取り組みが有効です。


従業員が業務において取得したライセンスに関する情報を一元管理し、従業員の裁量でライセンスを取得させないように周知徹底することも重要です


・クラウドサービスの活用:

クラウドサービスを活用することで、ITシステムの導入や運用コストを削減できる場合があります。セキュリティやデータ管理など、クラウドサービスの利用に伴うリスクについても検討する必要があります。


・システム統合:

買収側と被買収側のシステムを統合することで、業務プロセスを効率化し、データの一元管理を可能にすることができます。

システム統合には、多大な時間とコストがかかる場合があるため、綿密な計画と準備が必要です。


上記に加え、ITシステムの導入や運用を外部に委託することも有効な手段です。専門的な知識や技術を持つITベンダーに委託することで、自社のリソースをコア業務に集中させることができます。




まとめ(中小PMIガイドライン⑨)

 
まとめ(中小PMIガイドライン⑨)

今回は、経済産業省が提供する動画資料をもとに、中小企業におけるPMI、特に管理機能統合の重要性について解説してきました。


動画で紹介された人事労務、会計財務、法務、ITシステムという4つの分野は、PMIを成功に導く上で欠かせない要素です。


これらの分野における課題やリスクを把握し、適切な対策を講じることで、M&A後のシナジー効果を最大化し、企業成長へと繋げることができます。


PMIは決して容易なプロセスではありませんが、本ブログで紹介した内容を参考に、各分野の専門家の支援も得ながら、一歩ずつ着実に進めていくことが重要です。


ぜひ、このブログをPMI成功のための羅針盤として活用し、新たなステージへと進んでいきましょう。




※関連書籍

 
『日本型PMIの方法論――中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス』(竹林 信幸/プレジデント社)


本書は、中堅・中小企業向けのPMIに焦点を当てた実践的な指南書。


著者の豊富な経験に基づき、日本の企業文化に適したPMIの方法論を展開している。


特筆すべきは、PMIを単なる統合作業ではなく、買収後の成長プロセスとして捉える視点。


人的要素の重要性を強調し、企業文化の違いを問題視せず、むしろ活かす方法を提案している。


M&Aを検討する中堅・中小企業の経営者や実務担当者にとって、貴重な指針となる一冊といえるだろう。



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