中小企業向けのデューデリジェンスのポイント
更新日:10月14日
中小企業向けのデューデリジェンスには、いくつかの重要なポイントと注意点があります。以下に詳細を説明します。
〈目次〉
中小企業M&Aにおけるデューデリジェンスの特徴
中小企業のM&Aでは、大企業とは異なる特有の課題があります。
中小企業特有の注意点
オーナー経営者の影響:
中小企業において、オーナー経営者が経営と所有を分離できていない場合、経営判断に主観が入りやすくなります。
例えば、交際費や役員報酬の設定において、オーナーの個人的な感情や利益が影響を及ぼすことがあります。
このような状況では、企業の実際の収益力を正確に評価することが難しく、外部からの投資や買収の際にリスクを伴う可能性が高まります。
情報開示の不十分さ:
大企業に比べて情報開示が不十分な場合があり、隠れたリスクが存在する可能性があります。
財務データの信頼性:
中小企業の財務データは、大企業に比べて信頼性が低い場合があります。
適切なガバナンスが欠如していると、棚卸資産や在庫の実態把握が不十分になり、資産の過大または過少計上が発生するリスクが高まります。
また、中小企業では、会計基準と税務基準の違いを理解せずに、両者を同一視する傾向があります。
この誤解は、税務申告の正確性に影響を及ぼし、結果として未解決の税務リスクを抱えることになります。
特に、過去の申告漏れや納税状況の不備が発覚した場合、譲受企業が多額の追徴課税を負担するリスクが生じます。
事業の将来性:
中小企業は、事業環境の変化に大きく影響を受けやすい傾向があります。
デューデリジェンスの主要な調査項目
中小企業のデューデリジェンスでは、以下の項目を重点的に調査することが求められます。
財務状況: 決算書の粉飾の有無、簿外債務の存在など
法務面: 法的違反や問題の有無
事業の実態: 顧客基盤、競争力、将来性など
人事・労務: 従業員の状況、労務問題の有無
IT環境: システムの状況、セキュリティ対策など
デューデリジェンスの実施方法
中小企業のデューデリジェンスでは、以下の方法が考えられます。
内製(全部自社): 自社の専門家・有資格者で実施
外部委託: 専門家へ外注
一部外部委託・社内分担: 専門性の高い部分を外部委託し、社内外で分担
中小企業の場合、専門知識や人材の不足から、外部専門家の活用が効果的なケースが多いです。
中小企業のM&Aにおけるデューデリジェンスの費用と期間について、一般的な目安は以下の通りです:
費用と期間
費用の目安
デューデリジェンスの費用は、調査の範囲や深度、対象企業の規模によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
1. 財務・税務デューデリジェンス:
- 費用:50万円〜100万円以上
- 専門家の時給:2万円〜5万円
2. 法務デューデリジェンス:
- 費用:50万円〜100万円以上
- 専門家の時給:2万円〜5万円
3. ビジネスデューデリジェンス:
- 専門家の時給:2万円〜10万円
これらを合わせると、基本的なデューデリジェンスだけでも100万円から200万円以上の費用が必要となることがあります。
期間の目安
デューデリジェンスの期間は、対象企業の規模や複雑さ、調査の範囲によって異なりますが、一般的には以下のような目安が考えられます。
- 小規模な企業の場合:2〜4週間
- 中規模な企業の場合:4〜8週間
ただし、これはあくまで目安であり、実際の期間は案件ごとに大きく異なる可能性があります。
最善の方法に向けて
1. セルサイドデューデリジェンスの活用
売り手企業が事前に自社の問題点やリスクを把握することで、交渉をスムーズにできます。
2. 多面的な調査
財務、法務、事業、IT、環境など、多方面からの調査が重要です。
3. 専門家の活用
M&Aに精通した専門家とチームを組むことで、より効果的なデューデリジェンスが可能になります。
4. リスクとシナジーの正確な評価
デューデリジェンスを通じて、対象企業のリスクとシナジーを正確に評価することが重要です。
5. PMIを見据えた調査
統合後(Post Merger Integration)のリスク軽減とシナジー最大化を念頭に置いた調査を行います。
まとめ
中小企業のM&Aにおけるデューデリジェンスは、企業の実態を正確に把握し、リスクを最小化するための重要なプロセスです。
専門家の助言を得ながら、慎重かつ包括的に実施することが、M&Aの成功につながります。
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