ラーメン屋 VS 町中華
更新日:10月14日
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年9月27日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)
(有吉のお金発見 突撃!カネオくん/2024年8月31日放送)
日本の食文化において、ラーメン屋と町中華は欠かせない存在です。
どちらも庶民的で親しみやすい食事処ですが、ところが最近、明暗がわかれているということです。
今回は、この二つを比較しながら、その特徴と魅力を探っていきましょう。
〈目次〉
ラーメン屋の魅力
ラーメン屋は、日本の食文化において欠かせない存在となっています。専門店ならではの魅力がたくさんあります。
こだわりのスープ
ラーメン屋の最大の特徴は、長時間かけて丁寧に仕込まれたスープです。
豚骨、鶏ガラ、魚介など、様々な素材を使用し、店主のこだわりが詰まった一杯を提供しています。
多様な麺の選択肢
ラーメン屋では、太麺や細麺、ストレート麺や縮れ麺など、スープに合わせた最適な麺を選ぶことができます。
麺の食感や味わいにこだわる人にとっては、大きな魅力となっています。
専門性の高さ
ラーメン一筋で腕を磨いてきた店主が多く、その専門性の高さが光ります。
トッピングの組み合わせや調理法など、細部にまでこだわりが感じられます。
※ラーメン好き、ラーメン愛好家であることは、もはや一つの「道」を突き進むことにも似ています。また、ラーメン店のオーナー・店長にも、「求道者」タイプの方が多いように思います。
町中華の魅力
一方、町中華も独自の魅力を持っています。地域に根ざした親しみやすさが特徴です。
幅広いメニュー
町中華の強みは、ラーメンだけでなく、炒飯、餃子、チャーハン、麻婆豆腐など、多彩なメニューを提供していることです。
家族や友人と一緒に訪れた際に、好みの料理を選べる点が魅力的です。
リーズナブルな価格
町中華は、比較的リーズナブルな価格設定が多いのが特徴です。
学生や会社帰りのサラリーマンなど、幅広い客層に支持されています。
懐かしさと温かみ
長年地域に根付いた町中華は、懐かしさや温かみを感じさせる雰囲気があります。
常連客とのコミュニケーションも、町中華ならではの魅力です。
※こういった人気番組が存在するのも、「懐かしさと温かみ」の町中華ならでは。
「飲ろうぜ」は「やろうぜ」と読み、飲酒を前提とした楽しみ方がポピュラーであることをものがたっています。
メニューの違い
メニューの多様性
・ラーメン屋:
主にラーメンが中心で、スープや麺に特化した専門店が多いです。
スープは店ごとに独自のレシピがあり、豚骨、鶏ガラ、魚介など、特定のスタイルに特化していることが一般的です。
・町中華:
幅広い中華料理を提供し、ラーメンだけでなく、炒飯、餃子、麻婆豆腐など多様なメニューがあります。
地域に根ざした料理が楽しめるため、単品での注文も可能です。
スープの使い方
・ラーメン屋:
ラーメン一杯のために作られた専用スープを使用し、そのスープは他の料理にはあまり流用されません。
・町中華:
「万能スープ」と呼ばれるスープを使用することが多く、このスープは様々な料理に応用されます。
例えば、チャーハンや麻婆豆腐などでも同じスープが使われることがあります。
料理のスタイル
・ラーメン屋:
ラーメンは「中華そば」として提供されることが多く、その盛り付けや具材にもこだわりがあります。
具材はシンプルで、ナルトやメンマ、ネギなどが一般的です。
・町中華:
ラーメンは「中華そば」と呼ばれることもありますが、チャーハンは「炒めし」として提供されるなど、呼び方に地域性があります。
また、セットメニューとしてラーメンとチャーハンを組み合わせた「半チャンラーメン」なども人気です。
町中華のメニューが豊富な理由
町中華のメニューが豊富な理由には、いくつかの要因があります。
幅広い客層への対応
町中華は、地域に根ざした食堂として、様々な客層のニーズに応える必要があります。
・家族連れの場合
子供から大人まで楽しめる多様なメニューを提供することで、家族全員が満足できるようにしています。
・サラリーマンの場合
ランチタイムには、ボリューム満点で手頃な価格の定食メニューを用意し、夜には居酒屋代わりに利用できる一品料理も揃えています。
店主の創意工夫
町中華の店主は、ジャンルにこだわらず独自の味付けや料理を提供することが多いです。
・オリジナルメニュー
中華料理の枠にとらわれず、オムライスやカツ丼、カレーなど、様々な料理を提供することもあります。
・地域性
地元の食材や好みに合わせた独自のアレンジを加えることで、メニューの幅が広がっています。
経営戦略
豊富なメニューは、町中華の経営戦略の一つでもあります。
・リピーター確保
多様なメニューがあることで、お客さんが飽きずに何度も来店してくれる可能性が高まります。
・原価管理
様々な料理を提供することで、食材の無駄を減らし、効率的な原価管理ができます。
「万能スープ」の活用
町中華では、「万能スープ」と呼ばれる汎用性の高いスープを使用することが多いです。
・応用力
このスープを基本に、様々な料理を展開することができます。例えば、ラーメンのスープとしても、炒め物の味付けとしても使えます。
・効率性
一つのスープを多目的に使用することで、調理の効率化とメニューの多様化を同時に実現しています。
苦境の要因
冒頭の記事にあるように、最近ではラーメン屋の方が、経営的に苦境に陥っています。
最近のラーメン屋の倒産増加には、いくつかの要因が考えられます。
経済環境の変化
・コストの上昇
ラーメン屋は、原材料費、光熱費、人件費などのコスト上昇に直面しています。
特に、小麦などの輸入原材料の価格高騰や円安の影響を受けやすい構造があります。
・価格設定の難しさ
ラーメン業界には「1,000円の壁」と呼ばれる価格の上限があり、コスト上昇分を価格に転嫁しにくい状況があります。
値上げは客離れにつながる可能性が高く、経営を圧迫しています。
業界特性
・参入障壁の低さ
ラーメン店は初期投資が比較的少なく開業しやすいため、競争が激しくなっています。
これにより、差別化が難しく、経営の安定化が困難になっています。
・SNSの影響
ラーメン店は口コミやSNSの影響を受けやすく、人気の浮き沈みが激しい傾向があります。
これにより、安定した客層の確保が難しくなっています。
町中華との比較
町中華と比較すると、ラーメン屋は以下の点で経営が難しくなっています:
1. メニューの多様性:
町中華は多様なメニューを提供できるため、客層を広げやすい。
2. 価格設定の柔軟性:
町中華は様々な価格帯の料理を提供できるため、コスト上昇に対応しやすい。
3. 地域密着性:
町中華は地域に根ざした営業スタイルを取りやすく、常連客を確保しやすい。
市場調査データで比べてみると
J-Net21で、それぞれの市場調査データを確認することができます。
(※こちらは調査期間が2009年と若干古いので注意。また、定義として「町中華」に該当しない高級店も対象になっていると思われる)
ラーメン店の調査概要
・ラーメンは国民食として広く愛され、ラーメン店の利用率は85.3%に上昇。
・味重視で低価格志向が強く、女性ユーザーも増加。
・コロナ禍の影響はあるものの、今後も約8割が利用意向を示している。
・競争は激しいが、味に加え付加価値の創出がビジネスの鍵となる。
中華料理店の調査概要
・中華料理店の利用率は全体で78%と高く、特に40代男性は87%。
・利用頻度は30代以上の男性が高く、1回あたりの利用金額は700~1000円未満が中心。
・今後の利用意向は50代女性が最も高く72%。潜在需要は20代男性と30代女性で比較的大きい。
ラーメン屋の苦悩
(Book Bangニュース)
(Book Bangレビュー)
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ラーメン屋と町中華のビジネスモデルを明快に解説したのが本著。
二郎系ラーメン店:
・原価率高いが、高回転率と数多くのリピーターにより、利益を創出している。
高級志向ラーメン店:
・原価率高いが、二郎系よりも価格も高いため、利益を確保している。
・二郎系ほど客数は多くない。
町中華:
・原価率が他の2つよりも低い。
・ラーメン単体で勝負しておらず、アルコールの注文を稼ぐことで、一人当たりの利益が高くなっている。
・回転率は(特に夜は)低い。
現在のラーメン店の苦境を見ると、一世を風靡したビジネスモデルも、永続的であるわけではない、栄枯盛衰であるということを強く感じます。
周囲を取り巻く経済環境、外部要因というのは、経営を大きく左右するものです。
もともと、ラーメン屋がブームになる前は、町中華が経営的に苦労していたといわれています。
テレビ番組に出る町中華の経営者は、おおむねご高齢の方が多いですが、それは一方で、町中華の新規開業がラーメン屋と比べて少ない証であるともいえます。
町中華といえども、物価高の影響はあるはずですが、一人で何でもこなしてしまうスーパー調理人(=ベテラン店主)の頑張りにより、なんとか維持しているお店も数多くあるでしょう。
新規参入の容易さが続く限り、当分の間、ラーメン屋は気が抜けない状況です。
「ラーメン屋の参入障壁は高い」と認識されるまで、ラーメン屋店主の苦労が続きます。
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